南極に突如として現れた「通路」。
その「通路」を通り抜けた先にあるのは、
どこに位置するかも分からない謎の惑星、フェアリィ。
そして、コミュニケーションはおろか、理解すらできない敵、ジャム。
地球はそのジャムの脅威に対抗するため、
フェアリィ星に戦闘機を主力とした空軍、FAFを組織した。
士官ばかりからなる異様なその集団の中で、
さらに特殊なパーソナリティの人間ばかりを集めた部隊、
それが、主人公、深井零少尉の属する
「戦術空軍戦術戦闘航空団 特殊戦第五飛行戦隊」、
通称「ブーメラン戦隊」。
彼らに与えられた至上命令はただ一つ。
味方を犠牲にしてでも敵の情報を集め必ず帰還せよ――
おだてられようが無表情、けなされようが無関心
泣きつかれようが冷酷、脅されようが冷徹
そんな零が唯一信じるのは、愛機にしてFAFの最強戦闘機、
戦術戦闘電子偵察機スーパーシルフ、パーソナルネーム「雪風」のみ。
…ネタバレにならないように気をつかいますね。
言わずとしれた神林長平の名作です。
先に挙げたストーリィからも分かるように、戦闘機と敵と主人公、
という設定が突き詰められており、まるで実験小説のように舞台が限定されています。
その、まるでシミュレーションのような舞台で、神林はお得意の
「操られることへの戦い」をベースに、零と雪風の成長を見事に描き出します。
随分ウェットなテーマを扱っていながら全体に流れる雰囲気がドライなのは、
神林の、極限まで削り落としたような文体のなせる技でしょう。
戦闘シーンも神林らしく細部まで凝っており素晴しくカッコイイです。
とは言っても細かい用語なんて知らなくても読めてしまうのが神林のすごいところ。
逆に、この本を読んで航空機に興味を持った人も多いでしょう。
続編とかOVAはまた別の機会に。
ちなみに、零が唯一心を許す友人にして上司のブッカー少佐と、
零のカップリングは、○女子の常識みたいです。
OVAの絵柄が耽美っぽいんでなおさらです。
美男子や美おじさま好きな人にもお勧めです。