宇宙消失
――2034年、地球の夜空から星々が消えた。
正体不明の暗黒の球体が太陽系を包みこんだのだ――
確率を自由に操れたら良いと思ったことはありませんか。
この本はそんな能力を持つ人の話です。
とは言っても、この本ではそれは超能力の類ではなく、量子論の話。
シュレディンガーの猫の話は有名ですね。
箱の中のフサ猫は、観測されるまでは死んだ状態と生きた状態の半々。
観測された瞬間に波動関数が収縮してどちらかに決まります。
例えばルーレット。
ルーレットを振った瞬間に世界がいくつもの並行世界に分かれます。
その中には、あなたが外れた世界もあれば、
あなたが大当たりを取った世界もあるでしょう。
もし、その「大当たりを取った世界」を意識的に選ぶことができたなら――
その能力のキーを握るのは、この本で「モッド」と呼ばれる、
ナノテクで脳に配線されたコンピュータ。
頭の中にコンピュータがあると思ってください。
例えばメールソフトやブラウザに相当するモッドもあれば、
「集中力をめちゃめちゃに高めるモッド」なんてのもあります。
ベースはナノテクと量子論、形而上学的なアイデアですが、
スリルと冒険にあふれたストーリィは難しいことを全く感じさせず、
雪崩のように進行する話は、ラストで冒頭にあげた「暗黒の球体」と結びつき
宇宙規模の話となって最後のどんでん返しに向かいます。
個人的にはグレッグ・イーガンの最高傑作。
読み終わった後には思わず確率操作の練習をしたくなります(笑