虹は何色か

虹って何色ですか。


日本では、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の七色というのが伝統的な表現のようですが、
もちろん虹はほぼ連続したスペクトルなので、文化によって表現の違いがあります。
英語では―アイザックアシモフのエッセイで読んだのですが―虹の色をこうやって覚えるそうです。

Read Out Your Good Book in Verse.

これは、Red Orange Yellow Green Blue (Indigo) Violet の頭文字で、
Indigoは含まないことが多いので、英語だと6色〜7色で表現するようですね。


1677万色をフルカラーや天然色と言ったりします。
赤、青、緑の3原色それぞれ256段階の混合で表現される色をそう言うわけです。
人間の視覚で識別できる色の数は数百万程度らしいので、実用上は人間の目に見える色は
ほぼ1677万色の中に含まれていると思っていいのだと思います。


でも、虹の例をとっても分かるように、自然にある「光」が赤、青、緑の3つの周波数の
混合で出来ているわけはありません。実際には連続した周波数の混合、つまり「3原色」
どころか「無限原色」の混合で出来ているわけです。


赤の周波数を持った単色の光と、青の周波数を持った単色の光がぶつかると―
紫の周波数を持った単色の光になる?そんなわけはありませんね。
単に赤と青の周波数を持った、いわば光の「和音」になるだけです。


では何故3原色で「色」が表現できてしまうかというと、人間の視覚は、
赤の周波数に感度のピークがある細胞、青の周波数にピークがある細胞、緑の周波数にピークがある細胞、
この3種類の細胞で出来ているからだそうです。
たとえば紫の周波数の単色の光が来た場合、赤と青の細胞が反応する。
赤と青の混ざった光が来た場合も、赤と青の細胞が反応する。
人間の視覚のしくみではこの二つを区別する方法が無いので、3原色で「色」が表現できてしまう。


これは、音、つまり聴覚と比べると恐ろしく乱暴な情報処理のやりかたです。
聴覚は、「ド」と「ミ」と「ソ」、あるいはもっと沢山の音が混ざっていても(訓練しだいですが)
何と何が混ざった音なのか聞き分けがつきますよね。
視覚はそれに比べると、「ド」と「ミ」の和音が「レ」に聞こえてしまうようなものなのです。


そう考えると、世界はありのままに見えているようで、実は人間の視覚という強烈なフィルタを
通してしか見えていない、ということになります。
もし、「赤」と「青」の混ざった色を、「紫」ではなく、「赤と青の和音」と正しく認識できる
生物がいたら、世界はまったく違うように見えているのでしょうね。


つまり、私たちが感じている「色」というのは視覚と脳の情報処理が作り出す錯覚のようなもので、
ある意味、実際には存在しないものだと言ってもいいかもしれません。
ですから、私が「赤」だと思っている色と、他の人が「赤」だと思っている色は別かもしれない。
そういえば、「スペクトル」という言葉は、「亡霊(spector)」という言葉が語源になっているのでした。


さて、あなたには虹は何色に見えますか?